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InfoTalk #5

第5回InfoTalkのお題は、「建築・社会設計・情報システム: 3つのアーキテクチャが交差するヒューマンインタフェースに向けて」と、「流体シミュレーションによるものづくり支援」。

 3つのアーキテクチャが交差するほうは、慶應義塾大学 環境情報学部 中西 泰人准教授。バイク好きで機械工学を専攻した氏が、大学院では情報処理や建築・都市・メディアアートなどを専攻され、環境情報学というかわった分野でおもしろいヒューマンインターフェースの研究をしているというお話で、昔噂に聞いたことのある Cave というシステムの話も出てきた。当時、グラフィクスコンピュータで世界の最先端を走っていたSGIだが、4月になってRackable Systems社というクラスタコンピュータシステムの会社に買収されたり、同じ時代一世を風靡したSunMicrosystemsもOracleというデータベースベンダーに買収されるという話を耳にする昨今である。ワークステーションベンダーはその存在価値を廉価なパーソナルコンピュータと汎用ソフトウェアに奪われたが、その存在価値はしっかりと歴史に刻まれた。それでも、人とアートは常に新しいものを創造し続け、アンビエントな中に的確な情報を埋め込んだり、ソフトウェアの開発手法を空間に応用したりと、飽くことをかかないらしい。 そういえば、昨年はトリエンナーレの開催があり、併設の「心ある機械たち」 BankART LifeII Landmark ProjectIV ピオシティ B2 ギャラリーというのを見て不思議な気持ちにさせられたことを思い出した。 僕にはこれも、 Electrical Fantasista 2008Gyorol展示も、同じような類に見えてしまうのだが、中西氏によると違うらしい。

もうひとつのシミュレーションによるものづくりのほうは、 株式会社シーディー・アダプコ・ジャパン 取締役副社長の石川 正俊氏。こちらは、比較的馴染みのある話題。10年くらい前は実際に同じようなことをやっていた。タスクとして大筋は変わっていないが、その規模や精度は格段に向上している。 ちょうど、昔を思い出しながら、セルオートマトン法の本を読んでいるところだった。 セルオートマトン法は粒子法とも呼ばれ、流体力学の分野では、ナビエ・ストークス方程式を解くために、従来の有限要素法に変わる手法となるのでは、と当時は考えられていた。セルオートマトン理論の起源はコンピュータの父と称されるノイマンによる有限オートマトンにあるとされ、その後バークスによりまとめられた。この理論は70年代にコンウェイがライフゲームを考案したことにより再び脚光をあびるようになる。そして、ウルフラムによりラティスガス法のナビエストークス方程式への適用が証明され、流体シミュレーションの分野で脚光を浴びることになった。そういった導入で始まって様々な分野への応用がこの本には書かれている。著者の加藤恭義氏は東京工業大学を退官されて、MCX研究所を経営されている。

少し話はそれてしまったのだが、このようにInfoTalkでは、ICT分野といいつつもコンピュータサイエンス全般のお話もうかがえて面白いのも、その特徴だ。
JUGEMテーマ:コンピュータ

評価:
加藤 恭義,築山 洋,光成 友孝
森北出版
¥ 3,150
(1998-11)
コメント:流体シミュレーション手法の紹介です。

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